中医協資料を読む(第413回・2019年4月24日):2020年度改定に向けた高齢期の課題➀

2020年度の診療報酬改定の議論に向けて、中医協で「患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、年代別に課題を整理する」ということが行われています。

・青年期~中年期

・高齢期

が今回の中医協では議題として挙げられていましたので、各テーマでまとめをしたいと思います。今回のテーマは、「高齢期」です。

中医協のリンク:中央社会保険医療協議会 総会(第413回) 議事次第

その他、過去の中医協資料のまとめはこちらから。

medical-administrate.hatenablog.com

高齢期の課題 

日本が迎える高齢化社会の状況

日本の人口は減少局面を迎えており、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台になると推計されています。

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なかでも高齢化の進展には地域差があり、今後首都圏をはじめとする都市部を中心に、高齢者数が増加することが予想されています。

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75歳以上人口は、多くの都道府県で2025 年頃までは急速に上昇するが、その後の上昇は緩やかで、2030年頃をピークに減少するという見込みです。(2030年、2035年、2040年でみた場合、2030年にピークを迎えるのが34道府県2035年にピークを迎えるのが9県。東京都、神奈川県、滋賀県沖縄県では、2040年に向けてさらに上昇)

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また、高齢者の生活環境としては以下のような状況になることが予想されています。

世帯構造:単独世帯や夫婦のみの世帯が増加

生活機能:年齢とともに介護サービスの受給割合は多くなる。特に要介護者をみると、介助なしには外出できない割合が最も多い。

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前置きが長くなりましたが、上記のような高齢化の状況や高齢者の生活環境を踏まえ、高齢期の特性に応じた取組を行っていく必要があります。

高齢期の特性に応じた取組

高齢者の健康状態の特性

加齢とともに予備能力が低下し、虚弱(フレイル)の状態を経て、身体機能障害に至る、という特性を抱えています。

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フレイル…「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表す“frailty”の日本語訳として日本老年医学会が提唱した用語。フレイルは、「要介護状態に至る前段階として位置づけられるが、身体的脆弱性のみならず精神心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立 障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する。」と定義されている。(フレイル診療ガイド2018年版より)

地域在住高齢者の約5~10%がフレイルの状態という調査結果もあり、また関連して、高齢者の栄養状態をみると、85歳以上では肥満より低栄養の割合が高くなるという事実もあるようです。

「フレイル」、及びその前段階にあたる「プレフレイル」のような早期の段階からの介入・支援を実施することも重要です。予防・健康づくりのため、かかりつけの医療機関等と連携しつつ、介護予防(フレイル対策を含む)と生活習慣病等の疾病予防・重症化予防を一体的に実施する取組が行われています。

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認知症への対策 

65歳以上の認知症有病率は、加齢とともに増加傾向にあり、認知症患者の数は今後も増加が見込まれています。(2012年:462万人(約7人に1人)⇒2025年:約700万人(約5人に1人) )

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2015年1月に策定された認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では、 認知症の人を単に支えられる側と考えるのではなく、認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことがで きるような環境整備が必要であるという考え方を発表しています。
認知症の容態に応じた適時・適切な医療の提供のため、かかりつけ医・認知症サポート医等による体制整備が重要とされており、これらの取組等について、診療報酬でも評価を行っています。

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この他にも、

・入院中の認知症ケアに取り組んだことを評価する「認知症ケア加算」

・高齢者の特性等を踏まえ日常生活能力、認知機能、意欲等について総合的な評価を行った場合に算定ができる「総合評価加算」

が設けられており、外来・入院の両側面から認知症治療を診療報酬でも評価される仕組みが整備されています。

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さすが高齢化社会中医協資料でも論点が多く、一つの記事にまとめきれませんでした。

ということで、こちらの記事は2つに分けることとし、今回はこれでいったん終了です。次回の記事では「高齢期の治療・療養の希望と医療提供体制」「歯科疾患の管理」「薬剤使用の状況」を取り上げたいと思いますので、こちらもぜひ読んでください!