部署内での「仕事の平等性」を考える

リカードの比較優位論

私が大学1年生の時にとった経済学入門の授業の中で、今でも覚えているのが「リカードの比較優位」という貿易理論です。

Wikipediaからですが、理論としては以下のような内容になっています。

比較優位とは、自由貿易において各経済主体が(複数あり得る自身の優位分野の中から)自身の最も優位な分野(より機会費用の少ない、自身の利益・収益性を最大化できる財の生産)に特化・集中することで、それぞれの労働生産性が増大され、互いにより高品質の財やサービスと高い利益・収益を享受・獲得できるようになることを説明する概念である。

比較優位 - Wikipedia

 

小難しい用語が並んでいますが、ざっくり言うと「各個人が最も得意な分野に集中することで、それぞれの生産性が上がり、結果として全体のパフォーマンスが向上する」といった感じでしょうか。

「A国とB国があって、A国の方がジャガイモもリンゴも生産性が高く作れるが、リンゴの方が全体にとっての利益・収益性が高いので、A国はリンゴをつくることに集中したほうが良い」みたいな問題を期末試験で解いたことを今でも覚えています。

 

社会人になってから考える「比較優位」

社会人になって、年齢も経歴もばらばらの中で働くようになると、「この人、めちゃくちゃ仕事できるな~~」という人もいれば、「あの人、これしか仕事やらないの…」という人もいます。これはもう、どこの会社にでも起きている現象ではないかと思います。そして、できない人が難しい仕事に当てられたときは、本人も周りもつらい思いをすることになります。

リカードの比較優位」は、国対国の貿易理論ですが、会社の中にでも当てはめられると思っています。つまり、「仕事ができる人に、難しい仕事に集中してもらう環境を作り出す」ということです。言い換えると、「できない人に、できる人の時間を奪っていた仕事をやってもらう」ということになります。「チーム内の仕事を平等にする」という考え方を捨てることで、チームの生産性を高められる可能性は高くなってくるはずです。

 

「平等に接しない」は、マネジメント手法としては正しいのか?

上記の話を考えると、「平等に接する・仕事を振る」ということは、年齢やレベルがバラバラの社会人組織では、生産性を高めるという観点からは悪手になりえます。時間が限られた中で生産性を高めるためには、ある程度の「見切り」をする能力が管理職には求められるのだと思います。

以前読んだネットの記事で、「合理的なリーダー」の話がありました。

blog.tinect.jp

このマネジメントスタイルが唯一の正解ではありませんが、「平等性」を無視することはチームマネジメントに一定の解決策を示すものでもある、とは言えるのではないでしょうか。「『自分の能力に合った仕事ができないことによるストレス』を抑える」という観点からも、このマネジメントスタイルは有効なのかもしれません。

 

「平等に接しない」ことの問題点

ただし、ひとつ考えておかなければいけないのは、比較優位論は国全体の話であったのに対して、上記で考えた話は会社内の一部署の話であるということです。つまり、部署内での仕事のパフォーマンㇲを、給料という対価にどのように反映させるのかという問題が残っています。

「難しい仕事」をやっている人に高い給料、「簡単な仕事」をやっている人に安い給料、というのは簡単ですが、

・日本企業における年功序列型の賃金体系は崩せない

・「簡単な仕事」をやってくれる人がいるからこそ「難しい仕事」に集中できる環境が生まれるという循環が存在することへのメンバーの考え方は?

・そもそも「難しい仕事」「簡単な仕事」って誰が判断すればいいのか?

という点が、仕事のパフォーマンスと給料を結び付けるうえでの障壁として残ってきます。「合理的なリーダー」の話を取り入れた結果、「難しい仕事」をやっている人は安い給料、「簡単な仕事」をやっている人は高い給料で、「難しい仕事」を持っている人が割に合わない、と考えて退職してしまうというケースも想像できます。

 

「賃金体系」は会社全体で取り組む問題ですし、簡単にできるものではありませんので、中間管理職のクラスでやれる施策を打つ必要があると思います。

すぐにできることとして考えられることは、

・「簡単な仕事」と「難しい仕事」の部署内でのコンセンサスの形成

・人事考課と仕事の難易度の連動(難しい仕事に取り組んだ人には高めの評価を、簡単な仕事に取り組んだ人には低めの評価)させ、それを部署内の人に知ってもらう

・「難しい仕事」に取り組んでもらうための教育プログラムの実践

 

とかがあるのではと思います。ここら辺を、先日アップした以下の記事と連動させながら考えていきますので、本日はこの辺で。

medical-administrate.hatenablog.com