病院事務職の教育体制(私案)

先日、中途で入った他部署の先輩とお昼を食べていたときに、「この病院は教育体制とかが確立できていないよなぁ」という話になりました。前に在籍していた会社では、「〇年目までに××の資格を取る、△年目までに~~のレポートを出す」などなど、段階を踏んで勉強させる仕組みがあり、かつその勉強をしないと昇給や次の仕事に進むことができなかったそうです。(その方は建設会社に勤めていらっしゃったので、技術職だと建築士の資格を取るとか、営業職だと宅建不動産鑑定士をとるとか、仕事と資格が結び付くわかりやすい流れがあったのも事実なのですが)

病院事務職は、病院内で唯一資格なく仕事ができるポジションです。資格がなくても、OJTによる経験でそれなりに仕事が「できる」ようになっていきます。しかし一方で、配属先の上司や環境によってその人に与えられる教育の機会がバラバラになってしまうという現実があります。

いまの職場でも、スポット的に「手術室を見学してみよう」「Excelの理解度をE-learningで確認してみよう」などの院内研修は行われているものの、体系的に「〇年目までに~~の勉強をして、昇格試験までに△△の資格を取る」などのプログラムは全く存在しません。参加自体も任意であるため、新入職員をどのような研修を通じて育てるか…ということは確立できていないことが現状です。

 

今回は、学校を出て病院に入職してくれた事務職員が、どのような内容をどのようなステップを踏んで学んでいくべきなのか…自分なりに考えてみました。

1~3年目に学ぶべきこと

基本的なビジネススキルとして「パソコン・MicrosoftOfficeの操作」「企業におけるお金の流れ」を正しく理解することをテーマに、以下の二つの資格にチャレンジできるとよいかなと思います。

①パソコンスキル(MOS検定)

エクセル、パワーポイントの基本的な機能や操作方法を早めに理解することで、その後の業務効率が大きく高まるはずです。

②簿記3級

商業簿記の基本を理解し、簿記の考え方から病院の収支がどのように成り立っているのかをイメージできるようになるのではと思います。例えば、医事部門であれば患者負担金とレセプト請求のお金の違いとは何か、購買部門であれば費用と負債の違いや減価償却とは何か、など会計学の考え方を仕事とリンクさせられるようになってくるはずです。

4~6年目に学ぶべきこと

中堅職員に差し掛かるにあたり、「自分の病院への理解度を深める」ことをテーマに、病院経営に特化した資格や課題のまとめにチャレンジする機会を作れるとよいと思っています。

医療経営士3級

医療経営士は、医療機関の運営において必要な知識を確認するための民間資格として、事務職員の研修にも活用できそうです。3級では、以下のような項目について出題され、病院を取り巻く環境、医療システムがどのように成り立っているかなどが確認されます。

1. 医療経営史

2. 日本の医療政策と地域医療システム

3. 日本の医療関連法規

4. 病院の仕組み/各種団体、学会の成り立ち

5. 診療科目の歴史と医療技術の進歩

6. 日本の医療関連サービス

7. 患者と医療サービス

8. 医療倫理と臨床倫理

9. 医療に関する最近の動向

②学会発表

もう一つは、自身が病院内で取り組んできた仕事の成果をまとめ、学会で発表するという機会を持たせることです。6年目くらいまでになれば、自部署の一通りの仕事はこなせるようになっているはずですし、日常業務以外に委員会活動や院内プロジェクトにも関わる機会が増えてきます。その中でうまくいった仕事を自分でまとめて、学会で発表する、というハードルを事前に持たせられれば良いのではと思っています。

日常業務に追われがちな職員も、「学会で発表できるように、定型業務以外のことにも積極的に取り組まなければ」と思うはずですし、また上司の立場から、漫然と定型業務ばかりを与えるのではなく、「学会で発表できそうなプロジェクトなどにアサインしてあげなければ」!と気が回るようになるのではないでしょうか。

7~9年目に学ぶべきこと

7~9年目になると、病院事務では中間管理職になる人も出てき始めます。

ですので、ここでは「管理職として必要な知識を持っている」ことをテーマに、病院経営の知識やビジネススキルをより高度なレベルで持たせることが必要になると考えています。

医療経営士2級

医療経営士のホームページには、2級の到達レベルとして、

「医療経営に関する知識や経営課題を解決するための分析力を有し、実践できる。」

「中堅管理職が身に着けるべき医療経営に関する知識・問題解決能力を有し、実践できる。」

とあります。具体的には、下記の内容を学ぶことになります。実際の教科書を見たことはありませんが、ここまで病院のことが理解できている管理職が自分の部署にいると心強いなと感じます。

 [第1分野]

1.医療経営概論

2.経営理念・ビジョン/経営戦略

3.医療マーケティングと地域医療

4.医療ITシステム

5.組織管理/組織改革

6.人的資源管理

7.事務管理/物品管理

8.財務会計

9.資金調達

10.医療法務  

11.医療に関する最近の動向 

 [第2分野]

1.診療報酬制度

2.広報・広告/ブランディング

3.部門別管理

4.医療・介護の連携

5.経営手法の進化と多様化

6.創造するリーダーシップとチーム医療

7.業務改革

8.チーム医療と現場力

9.医療サービスの多様化と実践  

10.医療に関する最近の動向

②簿記2級

日商簿記2級の勉強内容を通じて、3級で学んだ商業簿記をより深い内容で学び、財務諸表の概念などにも触れることができます。また工業簿記の内容で、原価計算の考え方などにも触れ、経営管理に必要な数字の使い方をより高度に理解できるようになるはずです。

 

教育体制は人事制度と連動!

ここまで、1~3年目、4~6年目、7~9年目に勉強すべきことをまとめてみましたが、個人的にこのアイデアを実現させるにあたっては、「教育の結果を人事制度と連動させること」が一番のキモであると考えています。

例えば、3年目の終わりに昇格試験がある場合には、それまでにMOS検定と簿記3級を取り終えておく。中間管理職になるためには、医療経営士2級と簿記2級を取って、自身が関わった業務をまとめて学会発表をする。といった具合です。

このようにすることで、勉強することに対して明確な動機付けができると思いますし、病院として「この等級や役職になるためには、このレベルの知識量が必要と考えている」ということを若手に対して明確に示すことができます。「すべての資格を取り終わったら、その時点から管理者試験も受けれるようになります!」なんてすれば、飛び級での人事が出てきて社内が活性化するかもしれません。

最後に…

病院の事務職は、どこもOJTが中心で、「自分で自分の身を守りながら成長するしかないですよね」といった話を他病院の同世代の人ともよくしています。

しかし本当は、少なくとも10年目になるくらいまでは、「このように育ってほしい」という考えを、教育プログラムを通じて事務職員に伝えていくべきなのではと思っています。私は同期が辞めた際に、「この病院だと異動の機会もないし、新しいことを教わることも無くなってくるので、未来がないと感じてしまった」と言われ、とてもショックを受けました。その話を受けて、というだけではありませんが、自分の会社内で学ぶことをきちんと示し、段階を踏んで職員を育てることこそが、不平不満をもって会社を去る人を減らす方法の一つなのではないかと考えています。

 

そして最後に、こんなことを書いてきてお恥ずかしい話なのですが、私はこの中だと4年目に学会発表しかしたことがありません…。とりあえず、11月の試験に向けて、大学生のテスト勉強以来に簿記の勉強でも始めてみようかなと思いますが…勉強って面倒くさいですね笑