酒場の病院経営論

タイトルそのまんま、飲み会とかで聞いた話を忘れないようにまとめてみました。(一部酒場じゃないところもあり)

 

患者のボリュームゾーンはどこか?

病院として、どこの疾患・診療科の患者を多く集めていくべきか?というテーマです。

一つの区に10000人の患者予備軍がいる疾患(例えば心臓系疾患)と、100人の患者予備軍(例えば膠原病系疾患)がいる疾患であれば、市中病院としてアプローチをかけるのは10000人の患者予備軍がいる疾患である。そして、その患者軍を十分に受け入れられるだけの人員配置を行うという話でした。

そして、一人の患者は一つの疾患だけを抱えている訳ではなく、複合的な疾患を抱えていることが多いです。例えば、循環器の患者さんが消化器のがんを持っていたり、肺炎の症状が強かったり…といった具合です。10000人の患者予備軍には、10000以上の疾患があるので、その層にいかにアプローチしていくかが、病院経営のキモになる、というお話でした。

経営的には常識的な方法論だと思うのですが、医療の世界は優先順位をつけるのがタブー視されているのか、そもそもうちの病院の経営が下手なのか、あまりこういう議論が表立って生まれていません。優先順位が、診療科の医師数に反映されてしまうからなのでしょうか…。

 

儲かるところで儲けて、それを次の投資に充てる。

 病院には、儲けやすい診療科、儲けにくい診療科があります。前者は予定入院の多い外科系診療科や入院中の材料費がほとんどかからない産科(分娩)、後者は緊急対応で集中的に資源を投入しなければいけない救急部門や小児部門が考えられます。

しかし、「儲けにくい診療科」こそ真に地域で必要とされる病院としての機能でもあります。一般企業と同じような判断で「不採算」を理由に診療科を閉じることは、病院としても、国としても望ましいことではありません。

大切なのは、病院としてやるべき診療範囲を決めたうえで、その中で儲けやすい診療科、儲けにくい診療科はどこかということを認識すること。そして、どこで稼ぎ、どこでその利益を投資していくかを決めて、安定的な経営を継続していくこと、という話でした。

ちなみに「儲けにくい診療科」についてもフォローしますと、例えば救急診療を行うことで循環器や消化器の緊急疾患が集まりますし、小児をやることでその親も病院にかかりやすくなってくれます。間口の広い不採算部門を持つということも、病院の戦略を考える上で大切なことなのだと思います。

 

プロダクトポートフォリオマネジメントの考え方とかで、深掘り出来そうです。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント - Wikipedia

 

地域医療圏の定義とは?

特に東京など交通網が発達している地域については、「地元密着にどこまでこだわるべきなのか?」という話です。

地下鉄・JRを使えば、東京都内であれば30分以内で隣区・その先の病院にもアクセスができます。集患戦略の基本は、病院に近いエリアから患者を集めることですが、それだけでは限界があります。外科的手術や抗がん剤治療など、患者のニーズに沿った治療が必要な分野については、地域医療圏にこだわりすぎず、自病院の持つ強みに合致したエリアに営業をかけることが重要なのでは?という話でした。

救急・小児などの緊急性が高い分野では、地域密着というのは非常に重要なコンセプトになりますが、一方で「地域密着」以外にも集患戦略を持つことが大切なのかもしれません。

 

最近思うこと

これまでで述べたような、「どのような患者を集めていくか?」「どのように病院として儲けるか?」は、患者の命を扱う病院として表立って扱いにくいテーマなのかもしれませんし、もちろん企業秘密の面もあると思います。しかし、経営学の原則に沿って、うまくいっている病院のケース分析などが出来るとよいなーと思います。

調べてみると、病院の外の人(コンサルタントや大学教授など)が書いた病院経営の本というのはあるのですが、病院の中の人が書いた病院経営の本というのがほとんどありません。ここで書いた話もまだまだぼんやりしていますが、「病院の中の人が考える病院経営」こそが本来は王道になりえるはずです。今年はもう一度経営系の本を読んでみて、それを病院に当てはめると…ということにチャレンジしていきたいと思います。