モノを減らすことによる運営の効率化

先日、他院の資材管理課を見学に行く機会がありました。

感染管理の観点から滅菌室の業務プロセスを見直す必要があり、他院のノウハウを確認するための見学だったのですが、そこで目にしたのは、非常に整理整頓され、在庫を極力少なくして運営されていた診療材料倉庫や滅菌物の保管庫でした。

 

本題の滅菌室の業務プロセスと合わせて、手術室や外来・病棟で使用する在庫管理についても質問をさせていただいたのですが、大変勉強になったのでここでまとめます。

 

まず、「在庫が少ないことのメリットは何か?」についてですが、以下のようなことが考えられると思います。

①モノの回転が速くなり、期限切れの材料の廃棄や再滅菌が減る。

②お金を生まないスペース(=倉庫)を狭くすることができる。

③「在庫を増やすことはよくない」という認識を現場に植え付けられる。

 

①モノの回転が速くなり、期限切れの材料の廃棄や再滅菌が減る。

在庫を減らすことのメリットとして「廃棄が減る」はよく挙げられますが、「再滅菌が減る」はこの見学まで考えたことがありませんでした。(そのような現象が起きていることを知らなかった) 「再滅菌」とは、機器の滅菌期限が切れて、使用前に再度滅菌が必要になることを指します。機器の使用回数には限りがあり、洗えば洗うほど機器が消耗・金属疲労を起こします。「使用されずに再滅菌」は、機器管理をする上で減らさなければならない無駄の一つであることを学びました。

 

②お金を生まないスペース(=倉庫)を狭くすることができる。

院内の限られたスペースを有効活用するために、お金を生まないスペースは狭ければ狭いほど良いです。

 

③「在庫を増やすことはよくない」という認識を現場に植え付けられる。

ややこじつけですが、現場が在庫が少ない、使用する機器が標準化された状態での運営に慣れている、というのは資材管理を担当する部署にとって非常に仕事がしやすい環境だと思います。取り扱う機器が少なければ、その分使用すべき機器の絞り込みや回転率のモニタリングに集中が出来ます。そして何より、各部署・各診療科の「あれが欲しい」「これが欲しい」にいちいち対応しなくて済みます。これは事務の本音ですが…。

在庫管理も一つの経営であり、そのことに現場が理解を示している、ということは病院にとって非常に重要な文化の一つだと思います。

 

さて前置きが長くなりましたが、これらの在庫を少なくするメリットを頭に入れたうえで、「どのように在庫を減らしていくか?」を考えてみましたが、思いついたのは下記の三つでした。

①定期的な定数の見直しと絞り込み

②管理者の経験とキャラクター

③そもそも在庫のためのスペースを取らない

 

①定期的な定数の見直しと絞り込み

基本中の基本だと思いますが、定期的に機器の使用状況をモニタリングし、現場へのフィードバックと提案を繰り返す、という手法です。「定期的に」「定量的に」フィードバックする、というのがとても大事なようです。「再滅菌率が50%」とか言われたら、相手もさすがに減らさざるを得ないですからね。

 

②管理者の経験とキャラクター

病院の人員配置によると思いますが、医療材料を管理する責任者が現場上がりで、かつ在庫を費用と認識できるような方がいると、在庫を減らしていく取り組みが大きく進みます。私が見学に行かせていただいた病院は、材料倉庫を手術室を経験した看護師さんが担当されていました。このような経験を持った方が事務側にいれば、現場にごまかされることなく、機器の知識を対等に持って現場との話し合いが進められます。

 

③そもそも在庫のためのスペースを取らない

は意表を突くようなアイデアですが、倉庫のスペースを狭くしてしまい、物理的にものを置けないようにする、という作戦です。実際、見学に言った病院の材料倉庫は極端に狭く、手術室内のクリーンコアと呼ばれる材料置き場も無いそうです。隠し倉庫になっている廊下や休憩室がないかなどの点検は必要ですが、ある意味一番効果的な方法かもしれません。

 

うちの病院では出来ていないことが多く、見学の本来の目的と合わせて大変実りある実地視察となりました。現在は別部署ですが、このような在庫管理の意義や手法は他の分野でも応用可能なはずですので、今後の業務に役立てていこうと思います。