<書評>ダークサイド・スキル

最近、いわゆる「ビジネス本」からはとんと離れていたのですが、久々に買って一冊読んだのでそのことについて書きます。

 

「ダークサイド・スキル」というタイトルでなんだか一見すると悪そうですが、内容としては

・組織におけるミドルの役割

・チームマネジメントのコツ

・話を通すための根回しやネットワークづくりの重要性

・信頼を勝ち取るための立ち振る舞い方

などが主な内容です。

 

ビジネススキルには表と裏があって、

論理的思考能力、数字を見る力、プレゼンテーション力などが「表」だとすると、

ここで書かれていることは「裏」の話であり、

表の能力があることは大切ですが、裏の能力も織り交ぜていかないと真の力は発揮できませんよ、というストーリー展開になっています。

 

「ミドルは現場の一次情報と、経営幹部の一次情報を両方手に入れられる重要な役割である」という前提に立って話が進むので、20代後半~30代後半くらいまでの層に特に響く内容になっていました。

◎7つのダークサイド・スキル
その1 思うように上司を操れ
その2 KYな奴を優先しろ
その3 「使える奴」を手なずけろ
その4 堂々と嫌われろ
その5 煩悩に溺れず、欲に溺れろ
その6 踏み絵から逃げるな
その7 部下に使われて、使いこなせ

 

個人的には、「その4 堂々と嫌われろ」の内容が、特にそうだよな~と思いました。

「最大の抵抗勢力は現場である」というフレーズについて、

・現場では1日の仕事をこなすことが連続していて、将来を見通す力が整っていないこと

・リーダーは情報が揃わない中で意思決定を下す必要があること

・リーダーに親しみやすさと経緯は両立しないこと

などが書いてあり、最後に著者と対談している無印良品・松井社長が、嫌われる覚悟を持って売れ残りの在庫を社員を集めて燃やし(しかも2回!)、現場の意識を変えさせた、というエピソードが紹介されています。

 

「最大の抵抗勢力は現場である」

は、実はまさに病院でもその通りで、医師には医師の、看護師には看護師の、事務には事務の慣性の法則が働いていて、「いまからここに手を付けるのは難しいので…」という決め台詞で、いろいろな問題が先送りにされています。

トップ⇔ミドル⇔現場、という流れで情報が流れていくと考えると、

トップ:ミドルから得た情報をもとに、現場から嫌われる覚悟を持って意思決定をする

ミドル:正しい方向に進むためのプランをトップに進言する一方で、現場に対しては「トップもこう言っているし…」と現場の見方である立場をとってものごとを進める

現場:トップの指示のもとに、ミドルを中心にまとまりながら既存の方法を見直していく

 

ミドルは、現場に嫌われる改革プランをトップに提案して決めてもらいつつ、現場の味方になって話をまとめていくことが求められる、というのがこの本の結論なんだと思います。(多分)

 

難しいのが、ミドルが現場の考えの親玉に、トップがミドルの考えの親玉になってしまいがちなことです。

こうなると、組織が硬直化してしまい、改革のチャンスが来てもなかなかメスを入れることができません。

残念ながら病院ではどこもこういう風土になりやすいようです。医療者はそれぞれ専門職であり、「ここからここまでが自分の仕事」という意識が強いため、部門間で話し合いをしても「○○はこういう考え方で~~」「××はこういう考え方で~~」と、自分の部署の意見をミドル同士、トップ同士でぶつけ合い、なかなか正しい方向に話が進んでいきません。

 

その意味で、病院の中で事務が情報を整理し、特にいろいろなミドルの層の人をつなげてトップへ提案する、という仕事が重要になってくるのかな~と思いました。

医療者の言うことだけを聞いていればいいのなら、病院は「事務」を雇う必要はなく、各診療科・各部署の「秘書」を雇えばいいはず…なんてことを考えながら読んでいました。

 

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

 

 

ちなみに最後のところに、「結局、大切なのは『やり切ること』です」と書いてあります。

他の人のやり方に外からいちゃもんをつけるだけでなく、表と裏の能力をうまく使って、中から手と足を使って変えていかないといけないなと、改めて強く認識させられた一冊でした。

こういう本ばっかり読んでると、意識高い系になりすぎて逆に失敗しそうですが、年に1回くらいは自分の仕事を振り返るうえで読み直してもいいような気がします。