病床稼働率を上げる秘策は…シンプルな方針を徹底的に実践すること。

今年度になって、ありがたいことに色々な病院を見学させていただく機会が増えています。

そんな中で、500床を超える急性期病院で病床稼働率が100%近い病院を見学させていただきました。

病院経営の一番の稼ぎどころは「入院診療」で、入院収入は患者単価×ベッド数×病床稼働率、の掛け算で成り立っています。

このうち、病院側の努力で最も改善しやすいのが「病床稼働率」であり、病院経営の良し悪しと連動する重要な指標ですが、各病院ともにそれを上げることに苦戦をしているという印象です。(私が勤務している病院も同様です)

今回の見学で学んだことを、自分へのメモとしてもう一度まとめておこうと思います。

 

体制

「救急患者は受け入れる」というルール

来てくれる患者さんはベッドが空いている限り受け入れる、という病院としての方針が非常に明確になっており、それが実践されていました。

このような病院としてのルールがあることで、受け入れをするスタッフが働きやすくなります。

 

病床管理の担当者は事務職員

ここが他病院と一番の違いだと思ったのですが、病床管理の担当者を看護師ではなく事務職員が行っていました。

「病床管理という、医療者と直接やり取りをする業務を事務職員が行うことに問題はないのか?」という質問には、

・「救急患者は受け入れる」というルールがあり、各部門が病床管理に理解を示してくれること

・入院ベッドを決める際の基本的な確認項目(認知症など)が決まっていること

により、事務職員でも業務ができる環境やルールがあるので問題ない、という回答でした。このルールに沿いつつ実践あるのみ!、という非常に力強い回答でした。 

 

ベッドコントロールのテクニック

「診療科系病棟」はあるが、ルールに縛られない

医師の回診の効率性、看護師のケアの習熟性などを考えると、診療科毎に入院する病棟を決めることは運営にとって効率的です。しかし一方で、「○○科の病棟なので××科の患者さんはちょっと…」と言い訳を作ることにもつながります。

見学した病院では、この原則論はありつつも、空いた病床にはどんどん他科の患者が入っていきます。それが「文化」になっているとのことでした。病床管理を担当する事務職員が医師・看護師に時に頭を下げ、時に正論を通しながらこの文化を作って言ったのか…と思うと、本当に凄みを感じてしまいました。

 

長期入院の患者は長期連休の前に入院してもらう

普通の会社と同じく、病院でも月~金で医師の勤務が組まれますので、月~金に患者は治療を受けます。なので、病院の病床稼働率は火・水・木あたりがピークになり、逆に予定入院のない土・日は病床稼働率が低めになります。

そして病院の病床稼働の天敵は、正月・GWなどの長期連休です。予定入院がいないので、かなり稼働率が落ち込んでしまいます。この対策として、こちらの病院では長期連休の前の週には手術スケジュールの中に「予定で長期に入院する患者」を多めに組み入れて、長期連休の終盤に退院できるようなスケジュールを組んでいるとのことでした。これにより、長期連休中も予定入院の患者が一定数存在するようになり、病床稼働率の低下を最小限に抑えられます。

 

「ベッドが空いたので入院してください」と電話を入れる

入院スケジュールは、手術・内視鏡放射線治療などの空き状況と連動して決定することが多いです。しかし一方で、点滴治療などは病室内で治療を完結することができるため、病床稼働率に合わせて調整することが比較的容易になります。

この病院では、後者の治療についてはある程度病院側で裁量を持っておき、病床稼働が高くない時期に患者へ連絡を入れ、入院してもらう、という手法をとっているとのことでした。

 

気づいたこと

ここに書いたことは、「病床稼働率を高くする」ということを考えた戦略としては、実に当たり前のことのように思います。病院業界では異端でも、ビジネスの世界ではこれくらいやるのが当然なのかもしれません。

しかし、この「当たり前のこと」をプランニングして、それを実践しきることというのがとても難しいのは、ここまで高い病床稼働率の病院が全国にほぼ存在しないことを見ると明らかだと思います。

トップがシンプルな方針を立てて、それを現場がきちんと実践すること。その難しさと、実現された時に起きるインパクトの大きさというのを、まざまざと見せつけられた病院見学になりました。

PDCAサイクルという言葉はよく聞きますが、シンプルかつ明確なPを立てて、ガッツで徹底的にDoDoDo!、が病院経営において大切なのかもしれません。

手術を受けるときはかつらを外しましょう。

タイトルそのまま、最近仕事で遭遇したお話です。 笑えるようで笑えないテーマです。

手術室に入る際は、身一つで!

とあるヒヤリハットの報告から知ったのですが、手術を受ける時には、身に着けているアクセサリーをはじめ、装着物は外す必要があるそうです。

①爪:マニキュア、付け爪などは外す。

手術中は、爪にセンサーを付けて、動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定しています。

爪は患者の呼吸状態や種々の身体状態を知る大切な観察部位となるため、ここに不純物(?)がついているとその観察の支障になります。

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②眼:付けまつけ、まつげエクステは外す。

手術中は眼の乾燥を防ぐため、眼を閉じるようにテープで止めるそうです。

テープを使用するにあたり、付けまつげやまつげのエクステはその支障となるため、外す必要があります。これが出来ないと、角膜が乾燥し、感染症や炎症を引き起こす危険があるようです。

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③頭:ウィッグ、かつらは外す

今回の報告を通じて初めて知ったのですが、電気メスとは人体に電流を流すことにより切開を行う、という機能です。このためヘアピンなどの金属類でウィッグ、かつらなどが装着されていると、通電による熱傷が発生してしまいます。

以下、Wikipedia「電気メス」より抜粋です。

電気メスは人体に高周波電流を流して、このときの負荷もしくは接触抵抗によってジュール熱が発生し、この熱が瞬時に細胞を加熱し爆発・蒸散することによって切開作用を、細胞の水分を蒸発させタンパク質を凝固させることによって凝固作用をそれぞれ生じさせる。直接電気メスで止血する放電凝固法では直径0.5mm以下の小血管の止血が可能であり、止血鉗子で挟み止血してから血管を電気メスで焼烙する接触凝固法では直径2mmまでの血管の止血が可能であるとされている。

 

JR札幌病院の手術案内が分かりやすかったので、併せてご参照ください。

www.jrsapporohosp.com

看護師さんの立場から見ると…

当たり前ですが、「あなたはかつらですか?」などと面と向かって質問することははばかられるそうです。(当たり前か…)

付けまつげやジェルネイルと違い、一目で分からないようになっているのもむずかしいところですね。

デリケートの話題なので、問診項目の一つとして確認することがベターと思いますが、問診項目に含まれていない病院では個人の推理力・洞察力(?)によるところもあるかもしれず、意外と盲点になりやすい分野です。

看護のQ&Aサイトにも、同じような悩みと、同じような対処方法が掲載されていました。

www.kango-roo.com

 

 

 

男性と女性のかつらの位置づけの違い

さて、ここからは完全に私論であり、本題です。

この報告が上がった際に、女性陣は「プププ…」と、ちょっと小ばかにしたような笑いをする人が一定数いたのですが、男性の私からするとちょっと違和感を覚えました。

女性の「ウィッグ」と、男性の「かつら」って、社会的な位置づけが異なるものだと思っています。

 

女性の「ウィッグ」は、美意識・オシャレのためにつけるもの。ゼロをプラスにしていく効果が狙いです。(自論)

一方で男性の「かつら」は、若かった頃の自信を取り戻すためというか、マイナスをゼロに近づけていく効果が狙いです。(自論)

なんだかうまく説明できませんが、昨年話題になった豊田議員の「この、ハゲー!」という言葉に、かつらが持つ日本の社会的な意義というか、男性のコンプレックスが表れている気がします。

かつらの考察に飽きてきたので、あとは下記の記事を参照してください。

カツラが嫌われる理由 | かつら(カツラ)ならWith

 

なので、やっぱり看護師さんには、男性がかつらをつけている理由を推し量り、医療安全を守る立場から真剣にかつらと向き合っていただきたいと思います。

 

かつらを笑う女性に告ぐ

男性におけるかつらって、女性における何なのか?、と考えていたのですが、

「胸のパッド」

が一番ピンときました。

男性が女性に対して、「○○さん、胸にパッド入れてるらしいよ…」とか言って笑ってたら、今の時代はセクハラで訴えられるのではないでしょうか。

真の男女平等が求められるようになった今の時代、患者はもちろん、身の回りの人々の尊厳を傷つけない対応が必要であると、自戒の念を込めて。

最後にイッテQのデヴィ婦人の問題発言をご紹介してこの記事を終わります。

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※注:筆者は地毛です。

ストーリーを考えて仕事をする機会が病院事務には少ない?

以前、こんな記事を書きました。

medical-administrate.hatenablog.com

 

今月また会議があり、現在各グループに分かれて事前課題を作成しているところです。

 

事前課題のブラッシュアップにあたって…

事前課題のブラッシュアップのために、中間報告をオンライン上でやりましょうと前回の会議で決め、その課題の提出&フィードバックをメンバー同士で先週末に行いました。

しかし…出来上がってきたスライド(とそこに書いてあるストーリー)や、それに対するメンバーのフィードバックが私にとっては物足りず、もどかしい思いをしています。

 

具体的にどのような部分が物足りないのか?

中身をお見せできないので説明が難しいですが、とりあえず思いつくところを殴り書き…。

スライドの構成

  • 事前に決めたお題が、スライドの中に入っていないものがある
  • MECEな分析が入っておらず、グループごとのテーマの全体像が見えてこない
  • 「今後の活動方針」から、グループとしての仮説や検証方法が見えてこない
  • 「1スライド1メッセージ」が中身から読み解けない

フィードバック

  • スライドの構成に対する指摘がほとんどない
  • 「これ、やったら面白そうですね!」的なコメントが多い
  • 「テーマはこの掘り下げだとどうでしょう?」という前提に対する提案ではなく、「このように調べてみるのはどうでしょう?」という分析手法に対する提案が多い

 

自身の経歴を遡って思うこと

管理部門→現場部門→管理部門と異動を繰り返してきた私ですが、管理部門の時と現場部門の時を比較すると下記のような感じでした。

 

管理部門のとき

  • スライドを作る機会…多い
  • 上司…フィードバックをもらう機会が多い

 

現場部門のとき

  • スライドを作る機会…少ない
  • 上司…フィードバックをもらう機会が少ない

 

但し書きをつけておくと、管理部門の時の上司はどちらも民間企業からの転職者で、ロジカルにストーリーを練り上げることを重視するタイプでした。大変ではありますが、そのような人の下で揉まれた環境は、私にとって非常にラッキーであったと改めて思います。

現在のメンバーは、現場部門の人がほとんどで、そもそもこのような機会が今まで少なかったのかもしれません。

 

現場部門の現状と課題点

私も現場部門にいた時は、そもそもスライドなどを作って誰かに話をする、という機会がほとんどありませんでした。考えてみると、例えば医事課だとレセプトや患者対応など、「一対一」の個別の問題対応が圧倒的に多いです。ルーチンの仕事で一回一回前提から掘り下げて議論していたら仕事が回りませんので、これは部署の性質上、しょうがないところもあります。

しかし、病院事務として長く勤務するのであれば、ルーチンワークから離れて長いスパンで院内の問題解決にあたることももちろん必要です。(異動もありますので。)

ルーチンワークの部署に、あえて「不純物」的な仕事を入れて、そのような仕事に必要なスキルをOJTで学ぶ仕組みを作るということが、人材育成の上では非常に大切なのかもしれません。

 

もっと大切なこと:それを理解している管理者がいること!

ただ個人的に最も大切だと思うのは、考えたストーリー・スライドに対して時間をかけて遠慮なくダメ出しをしてくれる上司がいることです。 私自身は、上司に何度も体当たりしながら「まあ、今回はこの内容で話に行ってみてもいいんじゃない?」と何とか及第点を出してもらい、DrやNsのところに行き、うまくいった経験/いかなかった経験を重ねてきました。

自分の実力は未熟であると自覚していますが、そのような仕事ができる環境を、どの部署でも作っていかなくてはいけないのだと思います。私は「研修」というものをあまり信じていませんが、このような環境を作るためのはじめの一歩として、管理職・部下の双方が問題解決の基礎的な考え方を一緒に学び、共通言語を作ることは大切だと思っています。

 

こんなブログをメンバーに見られたら今後無視されてしまうと思いますが…

次の課題のレベルを上げられるようなフィードバックをし続けることが、とりあえず今の私にできることなので、頑張ろうと思います。

酒場の病院経営論

タイトルそのまんま、飲み会とかで聞いた話を忘れないようにまとめてみました。(一部酒場じゃないところもあり)

 

患者のボリュームゾーンはどこか?

病院として、どこの疾患・診療科の患者を多く集めていくべきか?というテーマです。

一つの区に10000人の患者予備軍がいる疾患(例えば心臓系疾患)と、100人の患者予備軍(例えば膠原病系疾患)がいる疾患であれば、市中病院としてアプローチをかけるのは10000人の患者予備軍がいる疾患である。そして、その患者軍を十分に受け入れられるだけの人員配置を行うという話でした。

そして、一人の患者は一つの疾患だけを抱えている訳ではなく、複合的な疾患を抱えていることが多いです。例えば、循環器の患者さんが消化器のがんを持っていたり、肺炎の症状が強かったり…といった具合です。10000人の患者予備軍には、10000以上の疾患があるので、その層にいかにアプローチしていくかが、病院経営のキモになる、というお話でした。

経営的には常識的な方法論だと思うのですが、医療の世界は優先順位をつけるのがタブー視されているのか、そもそもうちの病院の経営が下手なのか、あまりこういう議論が表立って生まれていません。優先順位が、診療科の医師数に反映されてしまうからなのでしょうか…。

 

儲かるところで儲けて、それを次の投資に充てる。

 病院には、儲けやすい診療科、儲けにくい診療科があります。前者は予定入院の多い外科系診療科や入院中の材料費がほとんどかからない産科(分娩)、後者は緊急対応で集中的に資源を投入しなければいけない救急部門や小児部門が考えられます。

しかし、「儲けにくい診療科」こそ真に地域で必要とされる病院としての機能でもあります。一般企業と同じような判断で「不採算」を理由に診療科を閉じることは、病院としても、国としても望ましいことではありません。

大切なのは、病院としてやるべき診療範囲を決めたうえで、その中で儲けやすい診療科、儲けにくい診療科はどこかということを認識すること。そして、どこで稼ぎ、どこでその利益を投資していくかを決めて、安定的な経営を継続していくこと、という話でした。

ちなみに「儲けにくい診療科」についてもフォローしますと、例えば救急診療を行うことで循環器や消化器の緊急疾患が集まりますし、小児をやることでその親も病院にかかりやすくなってくれます。間口の広い不採算部門を持つということも、病院の戦略を考える上で大切なことなのだと思います。

 

プロダクトポートフォリオマネジメントの考え方とかで、深掘り出来そうです。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント - Wikipedia

 

地域医療圏の定義とは?

特に東京など交通網が発達している地域については、「地元密着にどこまでこだわるべきなのか?」という話です。

地下鉄・JRを使えば、東京都内であれば30分以内で隣区・その先の病院にもアクセスができます。集患戦略の基本は、病院に近いエリアから患者を集めることですが、それだけでは限界があります。外科的手術や抗がん剤治療など、患者のニーズに沿った治療が必要な分野については、地域医療圏にこだわりすぎず、自病院の持つ強みに合致したエリアに営業をかけることが重要なのでは?という話でした。

救急・小児などの緊急性が高い分野では、地域密着というのは非常に重要なコンセプトになりますが、一方で「地域密着」以外にも集患戦略を持つことが大切なのかもしれません。

 

最近思うこと

これまでで述べたような、「どのような患者を集めていくか?」「どのように病院として儲けるか?」は、患者の命を扱う病院として表立って扱いにくいテーマなのかもしれませんし、もちろん企業秘密の面もあると思います。しかし、経営学の原則に沿って、うまくいっている病院のケース分析などが出来るとよいなーと思います。

調べてみると、病院の外の人(コンサルタントや大学教授など)が書いた病院経営の本というのはあるのですが、病院の中の人が書いた病院経営の本というのがほとんどありません。ここで書いた話もまだまだぼんやりしていますが、「病院の中の人が考える病院経営」こそが本来は王道になりえるはずです。今年はもう一度経営系の本を読んでみて、それを病院に当てはめると…ということにチャレンジしていきたいと思います。

自分が先輩になった時に何ができるのか?

早いもので、社会人生活5年目も終わりに近づいてきました。

病院業界では人事異動というものがあまりないようなのですが、私は5年目で3部署目。色々な経験をさせてもらっています。

ここまでのキャリアに関して人事への不満はあまりないのですが、残念だなーと思うのは後輩を持つ経験がほとんどなかったことです。(というかずっと一番下の立場) 「教えることは学ぶこと」という言葉がある通り、後輩の指導により得られる気づきもまた多かったのではないかと思います。

とはいえ、ここでそんなことを書いていても立場が変わるわけでもありませんので、自分が先輩になった時に何ができるのか?、ということをまとめてみます。

 

1.毎年のように上司が変わっていること

異動が多かったということもありますが、その中でも毎年のように自分の上司(先輩)が変わっています。

当たり前ですが、部署の規模や上司のキャラクターごとにマネジメントのスタイルは異なります。ある程度のところまでいったら自分に任せてくれる上司もいれば、打ち合わせ前に一回一回報告・相談が必要な上司もいました。いつ話に行っても機嫌が変わらない上司もいれば、気分次第で全然取り合ってくれない上司もいました。口だけで全然動いてくれない先輩もいれば、何も言わずに淡々と仕事を進める先輩もいました。

 

と、このように下の立場から様々な上司、先輩を見てきたことは、今後自分が後輩を持つ立場になるにあたって必ずプラスに働くはずだと思っています。

 

周りを見渡すと、長期間同じ部署にいる同期などは、どうしても仕事内容や仕事で付き合う人が一緒になりがちです。異動や上司の交代などにより、様々な仕事のスタイルと関わることが出来たことは、非常にラッキーでした。そして、自分が今まで会ってきた上司・先輩ともまた違うキャラクターであることが、今後の仕事にあたって生きてくるのではないかと思います。

 

2.現場部門の視点と管理部門の視点を持てたこと

これまで経験した部署を振り返ると、管理部門→現場部門→管理部門という順番で来ています。

うちの病院ではそもそもあまり異動がなく、管理部門にいる人はそのまま管理部門の中間管理職に、現場部門にいる人はそのまま現場部門の中間管理職に、という流れが多かったので、両方の視点を持って管理職に昇進した人がほとんどいません。

そういった意味で、現場部門と管理部門の両方の視点を持てたことは、これまでの病院事務職にあまりないキャリアをいち早く積めたと思っています。

管理部門で働いて強く思うのは、やはり現場を良くすることができるのは現場しかなく、その旗振り役は管理部門の意図を踏まえつつ、現場をリードできる管理職であるということです。しかし、「現場の管理職が現場職員と同じ視点しか持ち合わせていない」ことがとても多く、それが原因で問題解決を停滞させる場面を見るたびに、歯がゆい気持ちになります…。

3.たくさんの同世代職員が辞めていってしまったこと

入職式のいた時に15~6人くらいいた同期は、今や半分以下になってしまいました。前後の世代の先輩・後輩も、転職ラッシュでほとんど残っていません。

その流れの中で同世代の職員の人が感じていた不満や、そこでの現場の雰囲気を知ったことは、自分が上の立場になった時に、場のマネジメントをする上で生きてくると思っています。

辞めていった理由は人ざまざまですが、自分が上の立場になっていったときに同世代の人がいないというのは寂しさを覚えます。転職が当たり前の時代には古い考えなのかもしれませんが、やはり生え抜きの職員の世代間バランスが悪いということが5年後、10年後の組織にとっては悪影響が出てくるはずです。辞めていった人の組織への思いをいい方向に形にしていくことも、自分の役割だと勝手に認識しています。 

 

個人的には、来年以降は現場部門に戻り、その中で管理職的な役割の仕事をしてみたいと思っています。(が、こればっかりは会社の方針なので、なんとも言えませんが…。)

そのためにも、今の部署でいい仕事をして、次の部署からラブコールをもらえるように頑張ること!ですね。

「その検査、本当に必要か?」の視点から考えられること

整形外科の先生のつぶやきと、お昼休みでの雑談

先日、レントゲン撮影に関する件で、放射線科の人と一緒に整形外科の部長のところに相談をしに行く機会がありました。本題は放射線検査におけるオーダーの入れ方を直してください、という話だったのですが、途中話が脱線してうちの病院の放射線検査の話になりました。

 

その部長は最近赴任されたばかりの先生だったのですが、いわく、「この病院は不要と思われるCT検査が多すぎる」とのこと。

救急外来に来た患者に「とりあえず」撮るCT、内科で入院する患者に撮る造影CTなどなど、「それ、本当に検査結果を次の診療に使うのか?」というような検査も非常に多かったそうです。

 

その日のお昼に、部署の人とお昼を食べていて「うちの放射線科の医師は人数が多いのでは?」という話を聞いていたのですが、その後の整形外科の先生の話を聞いて、点と点がつながった気がしました。

 

病院内での負のループが発生?

この二つの話から思うのは、

①診療部門の医師が「とりあえず放射線科で検査してもらう」という意識からオーダーを出す

②その検査に対して放射線科医が読影をする

③①と②が積み重なり、放射線科での検査が増えていく

④その結果、「人員が足りない!」という声が大きくなり、スタッフが増えていく

⑤スタッフが増えていき、診療部門の医師が放射線科を頼りやすくなる

 

こんなループが存在するのでは?、と考えました。

入院患者へのCT検査はDPCに包括されて収入になりませんし、外来患者へのCT検査も、過剰と見なされた場合は査定審査の対象となります。一方で、読影する医師には大きな人件費がかかります。

本来は中央検査部門である放射線科から、「この検査は収入にもつながらず、医学的にも必要性が低いです!」と定期的にアナウンスしてくれればよいのですが、今のところそのような動きがありません。むしろ、依頼された読影をさばくのに精いっぱいのような印象を受けます。

 

対処方法として「放射線検査を減らす」、「放射線検査を院外へ移す」、の二つを考えてみようと思います。

 

1.放射線検査を減らす

先程の流れでいうところの、「①とりあえず放射線科で検査してもらう」というポイントを見つめなおし、医学的に必要性が低いと思われる検査を減らすキャンペーンと、そのモニタリングをするという方法です。

「○○科の先生はほとんど検査をしないが、××科の先生は検査を多く依頼する」といったようなばらつきがあるようにも感じますので、病院の公式ルールを設定してそれを院内にアナウンスする。そしてその結果を幹部にフィードバックし、各診療科に下ろしていってもらう、というサイクルを繰り返していくのが効果的そうです。

 

2.放射線検査を院外へ移す

もう一つ考えられるのが、「緊急性の低い放射線検査を院外へ移す」ということです。

予定での放射線科検査は緊急性もなく、撮影した結果は1か月後の外来でお知らせします、というようなことも多いです。こういった、いわゆる「すぐに判断が必要な検査」でない内容は、検査だけ外部クリニックに委託する、という解決方法も考えられます。

例えば放射線科検査では、「メディカルスキャニング」という放射線科検査専門のクリニックがあり、CT/MRIを短い予約期間で撮影できると聞いています。

https://www.medicalscanning.net/index.html

 

こういった医療連携との協力で、必要な検査だけを院内で行う、という体制に近づけていくことが出来そうです。

 

これらの取り組みにより実現できそうなこと

「緊急性の高い患者に対して、すぐに検査を提供できる体制」

「医学的に必要性の低い検査の削減と、それによる効率的なオペレーション」、

そしてその結果として、「人件費削減」が達成できるのではないか、というストーリーを考えてみました。また将来的には、放射線機器の更新・新規購入を抑えることもできるかもしれません。

 

今回の話は、「人件費の抑制」という経営的な視点と、「医療の質・効率性を高めたい」という医療現場的な視点の双方から考えてみた内容です。やはり事務として働くうえで、この二つの視点を持ち合わせることが必要だということを改めて実感しました。

そしてこの話をどう進めていくか、、今後の自分の宿題になりそうです。

医事課が成すべき仕事とは?

先週末に、”Healthcare Ops”という団体が開催した勉強会に参加してきました。

病院経営・運営に関わる人たちが集まって、互いの運用ノウハウや成功体験をシェアし、より良い病院を作っていこう、というコンセプトのもとにこのような勉強会を主催されているそうです。

その中で、済生会横浜市東部病院の金城さんの病院で働く職員としての思いのお話、医事課に関するお話が面白かったので、簡単ですがまとめたいと思います。

www.healthcare-ops.org

 

1.病院を変えるなら中から!

これが、金城さんのお話を聞いて一番共感した部分でした。

「医療を変えたい!」という志がある方は、今のところ病院の外にいて、ネットワークを構築されていることが多いように思います。

もちろん、ビジネスの自由度やマーケットとして大きい分野として、病院の中の職員よりも、病院の外の起業家として働く方が、魅力的なことも分かります。しかし、最終的に医療が提供されるのは病院の中であり(いまのところ)、医療業界の中心はこれからも「病院」であり続けるように思います。

「病院の事務職員」という働き方や立場はまだ日本では確立されていませんが、自分も病院の中から変化を起こしたいと思い、今の職場でも働いていましたので、同じような考えを持たれている方がいるということに非常に勇気づけられました。

 

2.プロセスから介入できるのが医事課の強み

勉強会の運営の話が終わった後に、自身が働かれている病院の医事課の話を紹介されていました。

その中でなるほどと思ったのが、「プロセスから介入できるのが医事課の強み」という点です。

総務や企画は、1か月、四半期、年間などでの「患者数」「売上」など、出てきた数値に対してアプローチをする部署。一方で医事課は、今日どれくらいの患者さんが来ていたか、今日退院した○○科の患者さんのDPCは何が多かったか、最近減っている症例は何かなど、出てきた数値の中身を知っている部署です。

DPCデータのフィードバックなどを通じて、医療者の行動を変える仕事がこれからの医事課に求められる、というまとめは非常に共感でき、また自分自身も今後チャレンジしていかなければ、と思いました。

 

3.「担当者レベルの改善」が実は問題

医事課の仕事では、窓口業務などはシフトを組みながらチームで対応する一方で、レセプト点検や診療科対応などの業務は個人作業になっています。個人的には「医事課あるある」とずっと思っていた、隣の人の仕事が見えなくなっていき、各担当者レベルでの改善が進み、本当にするべき業務・しなくていい業務の見極めが困難になっていく、という現象が、どの病院でも発生しているのだと感じました。

これに対し、金城さんは「人工」(1人当たりの作業工程数。”にんく”と読むそうです。はじめて知った…)という概念で、業務の効率化や標準化をはかり、医事課のミッション(=売上の最大化)に向けて活動すべし、という提言をされていました。

 

医事課にはずっといるベテラン職員も多く、これを言うと今の時代に怒られそうですが女性中心の世界で、良くも悪くも変化の起こしにくい環境です。一方で、病院の経営にダイレクトに関わるのは売上を取りまとめている医事課であり、そこが活発に動いているかが、病院の経営に大きな影響を与えます。

いずれは医事課に戻りたいなーと思っている自分にとって、戻ったらやらなければいけないこと、やってみたいことが非常にクリアになる講演になりました。来るべき日に備え、これからもこのブログなどを通じてアイデアをストックしていこうと思います。