部署内での「仕事の平等性」を考える

リカードの比較優位論

私が大学1年生の時にとった経済学入門の授業の中で、今でも覚えているのが「リカードの比較優位」という貿易理論です。

Wikipediaからですが、理論としては以下のような内容になっています。

比較優位とは、自由貿易において各経済主体が(複数あり得る自身の優位分野の中から)自身の最も優位な分野(より機会費用の少ない、自身の利益・収益性を最大化できる財の生産)に特化・集中することで、それぞれの労働生産性が増大され、互いにより高品質の財やサービスと高い利益・収益を享受・獲得できるようになることを説明する概念である。

比較優位 - Wikipedia

 

小難しい用語が並んでいますが、ざっくり言うと「各個人が最も得意な分野に集中することで、それぞれの生産性が上がり、結果として全体のパフォーマンスが向上する」といった感じでしょうか。

「A国とB国があって、A国の方がジャガイモもリンゴも生産性が高く作れるが、リンゴの方が全体にとっての利益・収益性が高いので、A国はリンゴをつくることに集中したほうが良い」みたいな問題を期末試験で解いたことを今でも覚えています。

 

社会人になってから考える「比較優位」

社会人になって、年齢も経歴もばらばらの中で働くようになると、「この人、めちゃくちゃ仕事できるな~~」という人もいれば、「あの人、これしか仕事やらないの…」という人もいます。これはもう、どこの会社にでも起きている現象ではないかと思います。そして、できない人が難しい仕事に当てられたときは、本人も周りもつらい思いをすることになります。

リカードの比較優位」は、国対国の貿易理論ですが、会社の中にでも当てはめられると思っています。つまり、「仕事ができる人に、難しい仕事に集中してもらう環境を作り出す」ということです。言い換えると、「できない人に、できる人の時間を奪っていた仕事をやってもらう」ということになります。「チーム内の仕事を平等にする」という考え方を捨てることで、チームの生産性を高められる可能性は高くなってくるはずです。

 

「平等に接しない」は、マネジメント手法としては正しいのか?

上記の話を考えると、「平等に接する・仕事を振る」ということは、年齢やレベルがバラバラの社会人組織では、生産性を高めるという観点からは悪手になりえます。時間が限られた中で生産性を高めるためには、ある程度の「見切り」をする能力が管理職には求められるのだと思います。

以前読んだネットの記事で、「合理的なリーダー」の話がありました。

blog.tinect.jp

このマネジメントスタイルが唯一の正解ではありませんが、「平等性」を無視することはチームマネジメントに一定の解決策を示すものでもある、とは言えるのではないでしょうか。「『自分の能力に合った仕事ができないことによるストレス』を抑える」という観点からも、このマネジメントスタイルは有効なのかもしれません。

 

「平等に接しない」ことの問題点

ただし、ひとつ考えておかなければいけないのは、比較優位論は国全体の話であったのに対して、上記で考えた話は会社内の一部署の話であるということです。つまり、部署内での仕事のパフォーマンㇲを、給料という対価にどのように反映させるのかという問題が残っています。

「難しい仕事」をやっている人に高い給料、「簡単な仕事」をやっている人に安い給料、というのは簡単ですが、

・日本企業における年功序列型の賃金体系は崩せない

・「簡単な仕事」をやってくれる人がいるからこそ「難しい仕事」に集中できる環境が生まれるという循環が存在することへのメンバーの考え方は?

・そもそも「難しい仕事」「簡単な仕事」って誰が判断すればいいのか?

という点が、仕事のパフォーマンスと給料を結び付けるうえでの障壁として残ってきます。「合理的なリーダー」の話を取り入れた結果、「難しい仕事」をやっている人は安い給料、「簡単な仕事」をやっている人は高い給料で、「難しい仕事」を持っている人が割に合わない、と考えて退職してしまうというケースも想像できます。

 

「賃金体系」は会社全体で取り組む問題ですし、簡単にできるものではありませんので、中間管理職のクラスでやれる施策を打つ必要があると思います。

すぐにできることとして考えられることは、

・「簡単な仕事」と「難しい仕事」の部署内でのコンセンサスの形成

・人事考課と仕事の難易度の連動(難しい仕事に取り組んだ人には高めの評価を、簡単な仕事に取り組んだ人には低めの評価)させ、それを部署内の人に知ってもらう

・「難しい仕事」に取り組んでもらうための教育プログラムの実践

 

とかがあるのではと思います。ここら辺を、先日アップした以下の記事と連動させながら考えていきますので、本日はこの辺で。

medical-administrate.hatenablog.com

「年功序列型」にとって代わるマネジメントを考える①

年功序列」とWikipediaで引くと、次のような定義が出てきます。

 

年功序列(ねんこうじょれつ)とは…官公庁や企業などにおいて勤続年数、年齢などに応じて役職や賃金を上昇させる人事制度・慣習のシステム。アメリカの経営学者であるジェイムズ・アベグレンが1958年の著書『日本の経営 I』において終身雇用や企業内労働組合とともに「日本的経営」の特徴として欧米に紹介した。

 

「日本的経営」の特徴の一つとして紹介されており、組織としては古い体制が多いと思われる医療機関では、このような人事体系になっているまだまだ多いのではないでしょうか。

しかし私が勤務している病院では、人事的な考え方が日本的ではないのか、 優秀な若手が多いのか、中堅層が物足りないのか、理由はよくわかりませんが、20代後半~30代前半で部署の中間管理職になり、実質的な部下のマネジメントを任される機会が多いように思います。

年齢に関わらず昇進・昇格のチャンスがあるということは素晴らしいことだと思うのですが、若くして管理職になった人には「年功序列型」に代わるチームマネジメントのスタイルを見つけなければいけないと感じています。

 

これはどういうことかというと、「年功序列型」のスタイルはある意味指示が出しやすいと思うからです。上下関係があって、人間的に角がなく、大きく的の外れていない指示を出す上司であれば、たいていの人はそこまで深い疑問や不満などを持たずに仕事にあたることも多いと思います。

一方で若くして管理職に昇進した場合、周りは自分よりも先輩ばかりで、しかもこの間までは仕事を教えてもらっていた人ばかり、というような状況になることも往々にしてあるはずです。

 

このような状況下の場合、

①上司⇔部下という仕事の関係を立てながら、先輩⇔後輩という人間関係は維持する。

②自分よりも年上の部下に対しては、その人のプライドや職場環境を気遣いつつ、やるべき仕事をやるべき期間内にやってもらう。

③自分よりも年下の部下に対しては、年上の人たちにがんじがらめにされないように守り、仕事では自由に表現をしてもらいながら、今後のキャリアを描けるような環境をつくる。

 

という、大きく三つの観点が求められるのではないかと思っています。①はチームに対するマネジメント、②と③は個人に対するマネジメントの話になります。

 

20代後半で院内では「中堅職員」になってきた自分にも、ある日突然管理職としての役割が求められる日が来るのだと思っています。①~③の話を、それぞれ個別論として今後書いていきますので、、よろしければ読んでくださると嬉しいです。

 

相手に仕事をしてもらうことの難しさと重要性

病院での事務職員の仕事は、「医療者をサポートする」という内容も多く存在します。

例えば、日中臨床業務で忙しい医療者に代わって資料やデータの分析をしたり、部門横断的なプロジェクトのスケジュール調整や複数部署間での意見の取りまとめをして、全体の業務がスムーズに動くような調整をしたりといった具合です。

事務職員の使命は病院の運営・経営をよくすることであり、患者さんのケアや対応に追われることのない事務部門がこのような業務を行うことは、病院にとって効率的で望ましい在り方だと思います。しかし、一つ注意しなければいけないのは「最終的に誰が責任を持っている仕事をサポートしているのか?」という点を決して忘れないことです。

 

例えば私が最近行っている仕事で、「緊急の放射線検査を規定時間内に放射線科医に読んでもらう割合を上げる」というものがあります。救急外来に搬送された患者さんや、入院中に急変した患者さんには、いち早く検査をして、その状況を特定するための放射線科医のレポートが必要になります。この業務の責任者は放射線科の部長であり、迅速にレポートを作成する割合はできるだけ高くキープし続ける必要があります。しかし残念ながら当院では決まった時間までに読まれている割合が低かったため、事務側でデータの分析などをサポートし改善をしていこう、ということで私が最近関わるようになりました。

 

データなどを細かく見た結果、「緊急性が低いと思われるような検査が、『緊急扱い』として多く依頼されている」ということが分かったので、改善の方向性としては「放射線科の考える緊急検査を定義して、それを院内の医師に周知していきましょう」ということを第一段階の目標としました。

幸いにも、放射線科の医師との話し合いはスムーズに進行させることができたので、上記の案を放射線科から院内の会議体でアナウンスをしてもらい、現在は改善がなされるかをチェックするという段階に来ています。

 

自分の仕事を例に出した話でなんだか恥ずかしいですが、今回の仕事では「データ分析・資料作成や院内会議での情報発信のコーディネート」までが事務の仕事、「院内会議への情報発信と、その後の現場レベルでの効果測定やフィードバック」が放射線科の仕事、といったように、お互いがやるべき仕事をきちんと分担して進めることができたと思っています。

このように、改善業務の旗振り役はその業務の主管部署にやってもらうが、改善業務を他者にやってもらうプロセスとその結果をきちんとマネジメントすることは事務がフォローする、という役割分担がとても重要になります。

これができないと、「何でもかんでも事務が決めて、最終的に臨床スタッフはその業務の傍観者になる」という現象が発生してしまいますし、残念ながら当院では実際にそのような場面を他部署で見かけることがあります。

また臨床スタッフが傍観者の立場になってしまうと、プロジェクトの成功体験・失敗体験を何も感じないままに終了してしまい、次の仕事に積極的に関わらなくなる・なんでも事務にやってもらおうとする、といったような悪い癖(?)がついてしまうように思います。

 

「相手に仕事をしてもらうことの難しさ」は、単純に立場の問題もあるような気がしています。医療者側で話をするのはその部署の部長などの管理者であるのに対し、事務部門はスタッフレベルでこのような仕事に関わることが多いです。そのような立場の違いがある場合は、言い方は少し悪いですが「正論で言い返し、相手に仕事をお願いする」というスキルも大切になります。(使うタイミングを間違えないように注意しなければいけませんが…)

ようやく自分も慣れてはきましたが、ここについては従来の性格+仕事の経験値が必要になる分野なので、事務部門内でそのような経験値を詰めるよう、各部署の管理者が注意してマネジメントにあたる必要があると思っています。

 

自分達が業務をすることよりも、他部署を動かして病院の経営・運営をよくすることが多い事務職だからこそ、「臨床現場に当事者意識をもって仕事をしてもらう」ということを強く意識しなければいけないなーと感じる今日この頃です。

病院事務職の教育体制(私案)

先日、中途で入った他部署の先輩とお昼を食べていたときに、「この病院は教育体制とかが確立できていないよなぁ」という話になりました。前に在籍していた会社では、「〇年目までに××の資格を取る、△年目までに~~のレポートを出す」などなど、段階を踏んで勉強させる仕組みがあり、かつその勉強をしないと昇給や次の仕事に進むことができなかったそうです。(その方は建設会社に勤めていらっしゃったので、技術職だと建築士の資格を取るとか、営業職だと宅建不動産鑑定士をとるとか、仕事と資格が結び付くわかりやすい流れがあったのも事実なのですが)

病院事務職は、病院内で唯一資格なく仕事ができるポジションです。資格がなくても、OJTによる経験でそれなりに仕事が「できる」ようになっていきます。しかし一方で、配属先の上司や環境によってその人に与えられる教育の機会がバラバラになってしまうという現実があります。

いまの職場でも、スポット的に「手術室を見学してみよう」「Excelの理解度をE-learningで確認してみよう」などの院内研修は行われているものの、体系的に「〇年目までに~~の勉強をして、昇格試験までに△△の資格を取る」などのプログラムは全く存在しません。参加自体も任意であるため、新入職員をどのような研修を通じて育てるか…ということは確立できていないことが現状です。

 

今回は、学校を出て病院に入職してくれた事務職員が、どのような内容をどのようなステップを踏んで学んでいくべきなのか…自分なりに考えてみました。

1~3年目に学ぶべきこと

基本的なビジネススキルとして「パソコン・MicrosoftOfficeの操作」「企業におけるお金の流れ」を正しく理解することをテーマに、以下の二つの資格にチャレンジできるとよいかなと思います。

①パソコンスキル(MOS検定)

エクセル、パワーポイントの基本的な機能や操作方法を早めに理解することで、その後の業務効率が大きく高まるはずです。

②簿記3級

商業簿記の基本を理解し、簿記の考え方から病院の収支がどのように成り立っているのかをイメージできるようになるのではと思います。例えば、医事部門であれば患者負担金とレセプト請求のお金の違いとは何か、購買部門であれば費用と負債の違いや減価償却とは何か、など会計学の考え方を仕事とリンクさせられるようになってくるはずです。

4~6年目に学ぶべきこと

中堅職員に差し掛かるにあたり、「自分の病院への理解度を深める」ことをテーマに、病院経営に特化した資格や課題のまとめにチャレンジする機会を作れるとよいと思っています。

医療経営士3級

医療経営士は、医療機関の運営において必要な知識を確認するための民間資格として、事務職員の研修にも活用できそうです。3級では、以下のような項目について出題され、病院を取り巻く環境、医療システムがどのように成り立っているかなどが確認されます。

1. 医療経営史

2. 日本の医療政策と地域医療システム

3. 日本の医療関連法規

4. 病院の仕組み/各種団体、学会の成り立ち

5. 診療科目の歴史と医療技術の進歩

6. 日本の医療関連サービス

7. 患者と医療サービス

8. 医療倫理と臨床倫理

9. 医療に関する最近の動向

②学会発表

もう一つは、自身が病院内で取り組んできた仕事の成果をまとめ、学会で発表するという機会を持たせることです。6年目くらいまでになれば、自部署の一通りの仕事はこなせるようになっているはずですし、日常業務以外に委員会活動や院内プロジェクトにも関わる機会が増えてきます。その中でうまくいった仕事を自分でまとめて、学会で発表する、というハードルを事前に持たせられれば良いのではと思っています。

日常業務に追われがちな職員も、「学会で発表できるように、定型業務以外のことにも積極的に取り組まなければ」と思うはずですし、また上司の立場から、漫然と定型業務ばかりを与えるのではなく、「学会で発表できそうなプロジェクトなどにアサインしてあげなければ」!と気が回るようになるのではないでしょうか。

7~9年目に学ぶべきこと

7~9年目になると、病院事務では中間管理職になる人も出てき始めます。

ですので、ここでは「管理職として必要な知識を持っている」ことをテーマに、病院経営の知識やビジネススキルをより高度なレベルで持たせることが必要になると考えています。

医療経営士2級

医療経営士のホームページには、2級の到達レベルとして、

「医療経営に関する知識や経営課題を解決するための分析力を有し、実践できる。」

「中堅管理職が身に着けるべき医療経営に関する知識・問題解決能力を有し、実践できる。」

とあります。具体的には、下記の内容を学ぶことになります。実際の教科書を見たことはありませんが、ここまで病院のことが理解できている管理職が自分の部署にいると心強いなと感じます。

 [第1分野]

1.医療経営概論

2.経営理念・ビジョン/経営戦略

3.医療マーケティングと地域医療

4.医療ITシステム

5.組織管理/組織改革

6.人的資源管理

7.事務管理/物品管理

8.財務会計

9.資金調達

10.医療法務  

11.医療に関する最近の動向 

 [第2分野]

1.診療報酬制度

2.広報・広告/ブランディング

3.部門別管理

4.医療・介護の連携

5.経営手法の進化と多様化

6.創造するリーダーシップとチーム医療

7.業務改革

8.チーム医療と現場力

9.医療サービスの多様化と実践  

10.医療に関する最近の動向

②簿記2級

日商簿記2級の勉強内容を通じて、3級で学んだ商業簿記をより深い内容で学び、財務諸表の概念などにも触れることができます。また工業簿記の内容で、原価計算の考え方などにも触れ、経営管理に必要な数字の使い方をより高度に理解できるようになるはずです。

 

教育体制は人事制度と連動!

ここまで、1~3年目、4~6年目、7~9年目に勉強すべきことをまとめてみましたが、個人的にこのアイデアを実現させるにあたっては、「教育の結果を人事制度と連動させること」が一番のキモであると考えています。

例えば、3年目の終わりに昇格試験がある場合には、それまでにMOS検定と簿記3級を取り終えておく。中間管理職になるためには、医療経営士2級と簿記2級を取って、自身が関わった業務をまとめて学会発表をする。といった具合です。

このようにすることで、勉強することに対して明確な動機付けができると思いますし、病院として「この等級や役職になるためには、このレベルの知識量が必要と考えている」ということを若手に対して明確に示すことができます。「すべての資格を取り終わったら、その時点から管理者試験も受けれるようになります!」なんてすれば、飛び級での人事が出てきて社内が活性化するかもしれません。

最後に…

病院の事務職は、どこもOJTが中心で、「自分で自分の身を守りながら成長するしかないですよね」といった話を他病院の同世代の人ともよくしています。

しかし本当は、少なくとも10年目になるくらいまでは、「このように育ってほしい」という考えを、教育プログラムを通じて事務職員に伝えていくべきなのではと思っています。私は同期が辞めた際に、「この病院だと異動の機会もないし、新しいことを教わることも無くなってくるので、未来がないと感じてしまった」と言われ、とてもショックを受けました。その話を受けて、というだけではありませんが、自分の会社内で学ぶことをきちんと示し、段階を踏んで職員を育てることこそが、不平不満をもって会社を去る人を減らす方法の一つなのではないかと考えています。

 

そして最後に、こんなことを書いてきてお恥ずかしい話なのですが、私はこの中だと4年目に学会発表しかしたことがありません…。とりあえず、11月の試験に向けて、大学生のテスト勉強以来に簿記の勉強でも始めてみようかなと思いますが…勉強って面倒くさいですね笑

病床稼働率を上げる秘策は…シンプルな方針を徹底的に実践すること。

今年度になって、ありがたいことに色々な病院を見学させていただく機会が増えています。

そんな中で、500床を超える急性期病院で病床稼働率が100%近い病院を見学させていただきました。

病院経営の一番の稼ぎどころは「入院診療」で、入院収入は患者単価×ベッド数×病床稼働率、の掛け算で成り立っています。

このうち、病院側の努力で最も改善しやすいのが「病床稼働率」であり、病院経営の良し悪しと連動する重要な指標ですが、各病院ともにそれを上げることに苦戦をしているという印象です。(私が勤務している病院も同様です)

今回の見学で学んだことを、自分へのメモとしてもう一度まとめておこうと思います。

 

体制

「救急患者は受け入れる」というルール

来てくれる患者さんはベッドが空いている限り受け入れる、という病院としての方針が非常に明確になっており、それが実践されていました。

このような病院としてのルールがあることで、受け入れをするスタッフが働きやすくなります。

 

病床管理の担当者は事務職員

ここが他病院と一番の違いだと思ったのですが、病床管理の担当者を看護師ではなく事務職員が行っていました。

「病床管理という、医療者と直接やり取りをする業務を事務職員が行うことに問題はないのか?」という質問には、

・「救急患者は受け入れる」というルールがあり、各部門が病床管理に理解を示してくれること

・入院ベッドを決める際の基本的な確認項目(認知症など)が決まっていること

により、事務職員でも業務ができる環境やルールがあるので問題ない、という回答でした。このルールに沿いつつ実践あるのみ!、という非常に力強い回答でした。 

 

ベッドコントロールのテクニック

「診療科系病棟」はあるが、ルールに縛られない

医師の回診の効率性、看護師のケアの習熟性などを考えると、診療科毎に入院する病棟を決めることは運営にとって効率的です。しかし一方で、「○○科の病棟なので××科の患者さんはちょっと…」と言い訳を作ることにもつながります。

見学した病院では、この原則論はありつつも、空いた病床にはどんどん他科の患者が入っていきます。それが「文化」になっているとのことでした。病床管理を担当する事務職員が医師・看護師に時に頭を下げ、時に正論を通しながらこの文化を作って言ったのか…と思うと、本当に凄みを感じてしまいました。

 

長期入院の患者は長期連休の前に入院してもらう

普通の会社と同じく、病院でも月~金で医師の勤務が組まれますので、月~金に患者は治療を受けます。なので、病院の病床稼働率は火・水・木あたりがピークになり、逆に予定入院のない土・日は病床稼働率が低めになります。

そして病院の病床稼働の天敵は、正月・GWなどの長期連休です。予定入院がいないので、かなり稼働率が落ち込んでしまいます。この対策として、こちらの病院では長期連休の前の週には手術スケジュールの中に「予定で長期に入院する患者」を多めに組み入れて、長期連休の終盤に退院できるようなスケジュールを組んでいるとのことでした。これにより、長期連休中も予定入院の患者が一定数存在するようになり、病床稼働率の低下を最小限に抑えられます。

 

「ベッドが空いたので入院してください」と電話を入れる

入院スケジュールは、手術・内視鏡放射線治療などの空き状況と連動して決定することが多いです。しかし一方で、点滴治療などは病室内で治療を完結することができるため、病床稼働率に合わせて調整することが比較的容易になります。

この病院では、後者の治療についてはある程度病院側で裁量を持っておき、病床稼働が高くない時期に患者へ連絡を入れ、入院してもらう、という手法をとっているとのことでした。

 

気づいたこと

ここに書いたことは、「病床稼働率を高くする」ということを考えた戦略としては、実に当たり前のことのように思います。病院業界では異端でも、ビジネスの世界ではこれくらいやるのが当然なのかもしれません。

しかし、この「当たり前のこと」をプランニングして、それを実践しきることというのがとても難しいのは、ここまで高い病床稼働率の病院が全国にほぼ存在しないことを見ると明らかだと思います。

トップがシンプルな方針を立てて、それを現場がきちんと実践すること。その難しさと、実現された時に起きるインパクトの大きさというのを、まざまざと見せつけられた病院見学になりました。

PDCAサイクルという言葉はよく聞きますが、シンプルかつ明確なPを立てて、ガッツで徹底的にDoDoDo!、が病院経営において大切なのかもしれません。

手術を受けるときはかつらを外しましょう。

タイトルそのまま、最近仕事で遭遇したお話です。 笑えるようで笑えないテーマです。

手術室に入る際は、身一つで!

とあるヒヤリハットの報告から知ったのですが、手術を受ける時には、身に着けているアクセサリーをはじめ、装着物は外す必要があるそうです。

①爪:マニキュア、付け爪などは外す。

手術中は、爪にセンサーを付けて、動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定しています。

爪は患者の呼吸状態や種々の身体状態を知る大切な観察部位となるため、ここに不純物(?)がついているとその観察の支障になります。

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②眼:付けまつけ、まつげエクステは外す。

手術中は眼の乾燥を防ぐため、眼を閉じるようにテープで止めるそうです。

テープを使用するにあたり、付けまつげやまつげのエクステはその支障となるため、外す必要があります。これが出来ないと、角膜が乾燥し、感染症や炎症を引き起こす危険があるようです。

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③頭:ウィッグ、かつらは外す

今回の報告を通じて初めて知ったのですが、電気メスとは人体に電流を流すことにより切開を行う、という機能です。このためヘアピンなどの金属類でウィッグ、かつらなどが装着されていると、通電による熱傷が発生してしまいます。

以下、Wikipedia「電気メス」より抜粋です。

電気メスは人体に高周波電流を流して、このときの負荷もしくは接触抵抗によってジュール熱が発生し、この熱が瞬時に細胞を加熱し爆発・蒸散することによって切開作用を、細胞の水分を蒸発させタンパク質を凝固させることによって凝固作用をそれぞれ生じさせる。直接電気メスで止血する放電凝固法では直径0.5mm以下の小血管の止血が可能であり、止血鉗子で挟み止血してから血管を電気メスで焼烙する接触凝固法では直径2mmまでの血管の止血が可能であるとされている。

 

JR札幌病院の手術案内が分かりやすかったので、併せてご参照ください。

www.jrsapporohosp.com

看護師さんの立場から見ると…

当たり前ですが、「あなたはかつらですか?」などと面と向かって質問することははばかられるそうです。(当たり前か…)

付けまつげやジェルネイルと違い、一目で分からないようになっているのもむずかしいところですね。

デリケートの話題なので、問診項目の一つとして確認することがベターと思いますが、問診項目に含まれていない病院では個人の推理力・洞察力(?)によるところもあるかもしれず、意外と盲点になりやすい分野です。

看護のQ&Aサイトにも、同じような悩みと、同じような対処方法が掲載されていました。

www.kango-roo.com

 

 

 

男性と女性のかつらの位置づけの違い

さて、ここからは完全に私論であり、本題です。

この報告が上がった際に、女性陣は「プププ…」と、ちょっと小ばかにしたような笑いをする人が一定数いたのですが、男性の私からするとちょっと違和感を覚えました。

女性の「ウィッグ」と、男性の「かつら」って、社会的な位置づけが異なるものだと思っています。

 

女性の「ウィッグ」は、美意識・オシャレのためにつけるもの。ゼロをプラスにしていく効果が狙いです。(自論)

一方で男性の「かつら」は、若かった頃の自信を取り戻すためというか、マイナスをゼロに近づけていく効果が狙いです。(自論)

なんだかうまく説明できませんが、昨年話題になった豊田議員の「この、ハゲー!」という言葉に、かつらが持つ日本の社会的な意義というか、男性のコンプレックスが表れている気がします。

かつらの考察に飽きてきたので、あとは下記の記事を参照してください。

カツラが嫌われる理由 | かつら(カツラ)ならWith

 

なので、やっぱり看護師さんには、男性がかつらをつけている理由を推し量り、医療安全を守る立場から真剣にかつらと向き合っていただきたいと思います。

 

かつらを笑う女性に告ぐ

男性におけるかつらって、女性における何なのか?、と考えていたのですが、

「胸のパッド」

が一番ピンときました。

男性が女性に対して、「○○さん、胸にパッド入れてるらしいよ…」とか言って笑ってたら、今の時代はセクハラで訴えられるのではないでしょうか。

真の男女平等が求められるようになった今の時代、患者はもちろん、身の回りの人々の尊厳を傷つけない対応が必要であると、自戒の念を込めて。

最後にイッテQのデヴィ婦人の問題発言をご紹介してこの記事を終わります。

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※注:筆者は地毛です。

ストーリーを考えて仕事をする機会が病院事務には少ない?

以前、こんな記事を書きました。

medical-administrate.hatenablog.com

 

今月また会議があり、現在各グループに分かれて事前課題を作成しているところです。

 

事前課題のブラッシュアップにあたって…

事前課題のブラッシュアップのために、中間報告をオンライン上でやりましょうと前回の会議で決め、その課題の提出&フィードバックをメンバー同士で先週末に行いました。

しかし…出来上がってきたスライド(とそこに書いてあるストーリー)や、それに対するメンバーのフィードバックが私にとっては物足りず、もどかしい思いをしています。

 

具体的にどのような部分が物足りないのか?

中身をお見せできないので説明が難しいですが、とりあえず思いつくところを殴り書き…。

スライドの構成

  • 事前に決めたお題が、スライドの中に入っていないものがある
  • MECEな分析が入っておらず、グループごとのテーマの全体像が見えてこない
  • 「今後の活動方針」から、グループとしての仮説や検証方法が見えてこない
  • 「1スライド1メッセージ」が中身から読み解けない

フィードバック

  • スライドの構成に対する指摘がほとんどない
  • 「これ、やったら面白そうですね!」的なコメントが多い
  • 「テーマはこの掘り下げだとどうでしょう?」という前提に対する提案ではなく、「このように調べてみるのはどうでしょう?」という分析手法に対する提案が多い

 

自身の経歴を遡って思うこと

管理部門→現場部門→管理部門と異動を繰り返してきた私ですが、管理部門の時と現場部門の時を比較すると下記のような感じでした。

 

管理部門のとき

  • スライドを作る機会…多い
  • 上司…フィードバックをもらう機会が多い

 

現場部門のとき

  • スライドを作る機会…少ない
  • 上司…フィードバックをもらう機会が少ない

 

但し書きをつけておくと、管理部門の時の上司はどちらも民間企業からの転職者で、ロジカルにストーリーを練り上げることを重視するタイプでした。大変ではありますが、そのような人の下で揉まれた環境は、私にとって非常にラッキーであったと改めて思います。

現在のメンバーは、現場部門の人がほとんどで、そもそもこのような機会が今まで少なかったのかもしれません。

 

現場部門の現状と課題点

私も現場部門にいた時は、そもそもスライドなどを作って誰かに話をする、という機会がほとんどありませんでした。考えてみると、例えば医事課だとレセプトや患者対応など、「一対一」の個別の問題対応が圧倒的に多いです。ルーチンの仕事で一回一回前提から掘り下げて議論していたら仕事が回りませんので、これは部署の性質上、しょうがないところもあります。

しかし、病院事務として長く勤務するのであれば、ルーチンワークから離れて長いスパンで院内の問題解決にあたることももちろん必要です。(異動もありますので。)

ルーチンワークの部署に、あえて「不純物」的な仕事を入れて、そのような仕事に必要なスキルをOJTで学ぶ仕組みを作るということが、人材育成の上では非常に大切なのかもしれません。

 

もっと大切なこと:それを理解している管理者がいること!

ただ個人的に最も大切だと思うのは、考えたストーリー・スライドに対して時間をかけて遠慮なくダメ出しをしてくれる上司がいることです。 私自身は、上司に何度も体当たりしながら「まあ、今回はこの内容で話に行ってみてもいいんじゃない?」と何とか及第点を出してもらい、DrやNsのところに行き、うまくいった経験/いかなかった経験を重ねてきました。

自分の実力は未熟であると自覚していますが、そのような仕事ができる環境を、どの部署でも作っていかなくてはいけないのだと思います。私は「研修」というものをあまり信じていませんが、このような環境を作るためのはじめの一歩として、管理職・部下の双方が問題解決の基礎的な考え方を一緒に学び、共通言語を作ることは大切だと思っています。

 

こんなブログをメンバーに見られたら今後無視されてしまうと思いますが…

次の課題のレベルを上げられるようなフィードバックをし続けることが、とりあえず今の私にできることなので、頑張ろうと思います。